2009年12月3日木曜日

FNS歌謡祭がもたらしてくれたもの



降る雪が父子に言を齎しぬ(ふるゆきがおやこにことをもたらしぬ)  加藤楸邨




昨夜のFNS歌謡祭は,憂いに沈み言葉を喪いつつあったトンペンに彼らを語る言葉を再び与えてくれました。久しぶりに本当に久しぶりにファンとファンが語り合いの楽しさに満たされた夜。


泣きながら見ていた母のところへもお仲間から電話が入り,これまた泣きながら語り合ったそうです。


良い番組でしたね。


テレビ番組を語る時,しばしば「良質な」という言い回しが使われますが,尊大な気がしてあまり好きな言葉ではありません。しかし,今回のFNSは(前回も前々回も知らないのですけれど),正に良質な歌番組でした。こんな歌番組がいつあったのか,いつ見たことがあったのかもう記憶にありません。練りに練り上げられた番組の企画構成の素晴らしさはもとより,日本の歌謡界に,いつの間にこんなに歌唱力のある人たちが育っていたのか,その層の厚さにも驚きました。刺激に慣れて,少々のことでは驚かぬ世の中になりましたが,新鮮な「驚き」を味わった夜でした。


テレビの前に4時間(正確には,テレビを離れていてもテレビを携帯して歩きまわって4時間)。暫く破られることはない最長不倒記録です。


いきなりSMAPというのがまず予想外。
おお,そうきましたか,う~む,これではコラボも含めて2曲の東方神起も分離分割で来るかもしれぬ,いつ「投入」されるか油断できんぞぉ~っ,と出だしから焦りました。


それから息もつかせぬ(いや,瞬時に挟みこまれるCMに何度も何度も息をつきながらの)展開。選りすぐられた名曲の数々,観客がいわばライバルという心地よい緊張感のもとに繰り広げられる力のこもったパフォーマンス,熱唱。過去の秘蔵VTRも,よくあるようなただ流すだけの時間つぶしの道具ではなく,見ごたえ聴きごたえのあるものばかりでした。


母としては,一瞬の裕次郎にまずぐぐっと。
60年代,70年代,80年代,90年代と視聴者の誰もが青春の歌を懐かしんだことでしょう。
いい歌は時代を超えていいものですね,決して古くならない。
「LOVE IS OVER」はご本家の欧陽菲菲さんのコラボも聴きごたえがありましたが,美空ひばりさんのも出色でしたね。さすが,昭和のひばりです,何を歌わせても歌いこなす不世出の歌手です。


と,感心しながら久々の歌番組を堪能しつつも,頭から離れないのは東方神起の4文字。
菊池さんはじめ番組スタッフの配慮でしょうか,歌うまでに幾度も「出番」がありました。歌わないのにいきなりつるのさんと並んでご紹介,おおおおっと思ったらスルッと終わって,ホッと一息ついたと思ったら,画面の隅に映し出されるテーブル映像,ジュンス,ああユノ,ジェジュン,・・・・・・・・おおお,そっちか~~こっち,こっちも見とかなきゃ,株価は乱高下,市場は大混乱に陥ったのであります。


「ありがたいなあ,こんなに気を遣ってもらって・・」と久しぶりに訪ねた親戚の家で息子や孫が歓待を受けたときのような感謝が沸々とわきあがってきたころに,極めつけは,ああ,ああ,そこまでしていただけますか,久々のSMAPとの「共演」。


キムタクよ,ユノが出て来るまでは(世界一はマイケルですが)日本の芸能界では貴方が母のイチオシの踊り手でした。過去形でゴメンナサイ。そんな「因縁」にある貴方のあのコメントに母も私も直に手をとってお礼が言いたい!貴方をトップの位置から(勝手に)引きずりおろした母を恨むことなく,そのライバルに最上級の讃辞をありがとう!!!とくに「ミンナココロガキレイ」と言ってもらったこと,何より嬉しいひと言でした。クールな貴方から出た言葉だけに率直に受け止めました。今の状況にある彼ら一人ひとりにも心に響く言葉だったに違いありません。


そしていよいよ,フィナーレ。
彼らの出番がやってきました。
後に続くはEXILE,嵐。
彼らのポジションがわかります。
オリンピックのマラソンで「いい位置につけてますねぇ~。」というあの解説をそのまま拝借。


一番筆を極めて書くべき歌の詳細。
2曲ともワンフレーズごとに感想を書きたいくらいですが,ハーモニーを云々するよりも心をぐっと掴まれた出来事について書かせてください。
出来事というのかな,表情というべきでしょうか。そう,心に残った印象的な表情が二つありました。


一つは,「レイニーブルー」での徳永英明さんの表情です。
それまでのステージではあまり感情を出さずに歌っていた徳永さんが,トンとのコラボでは全く違っていました。とくに歌い終わった瞬間,感極まったようにトンのほうを見て何か呟いていましたね。


そのときの心の呟きをわたくしが再現いたします。
「(まず冒頭に感動のため息が入ります),なんて歌い方をするんだ,こんな歌い方ができるなんて・・・・この子たちはいったい・・・・う~ん,すばらしい!!!ありがとう,本当に楽しかったよ!」
絶対こう言ってました。徳永英明さんのお知り合いの方,間違いありません,お尋ねください。


そしてもう一つ,非常に印象的だったのがテーブルで聴き入る他の出演者の表情です。今をときめくアーティストたちが,まるで一ファンのように彼らの歌に心を揺さぶられていました。無心に近い表情でした。あんな魂のこもったハートフルなしかも美しいハーモニーを生みだせる「アイドルグループ」は日本にはいないからです。(ああ,言いきって気持ち良い)




あなた達はかけがえがない。
戻ってくるべきです。
韓国に,日本に,アジアにそして世界へ。